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セミナーコンテストグランプリ2019 特別対談


セミナーコンテストグランプリ2019
しぎはら ひろ子 × 立石 剛 特別対談

「セミナー講師の服飾戦略」

特別対談

立石:こんにちは。日本パーソナルプランド協会代表理事、立石剛と申します。今日はセミコングランプリ恒例・特別対談として、しぎはらひろ子先生をお迎えしました。テーマは「セミナー講師の戦略」です。しぎはらさん、簡単に自己紹介をお願いします。

しぎはら:こんにちは。しぎはらひろ子です。ファッションプロデューサー、服飾専門家として著書を6冊出版させていただきました。内面の視覚情報としての服飾のあり方について、セミナーや講演でお伝えさせていただいています。

立石:最近は出版のペースが速いですね。

しぎはら:そうなんです。この3年間で6冊、本を書きました。
本業であるファッションプロデューサーの代表的な仕事としては、109(イチマルキュー)の立ち上げや、千趣会さん、ベルメゾンさん、JRさんの、主に販売員教育です。それと一つのブランドを市場で育て、成長させる。つまり何十億単位の仕事をプロデュースするといった裏方的なものが多かったので、人前に出ることはありませんでした。

販売員の服飾研修は、のべ8万人くらいやっています。販売員教育は、ただオシャレになる、そのブランドの服を着るだけでは不十分なんです。どうすれば販売員として内面もスキルも身に付けられるかを考えた時、自分が売っている洋服のコンセプトとフィロソフィー(哲学)を理解することが、手っ取り早く着こなせることにつながります。

これをベースに「服飾戦略」というメソッドを構築し、教育してきました。私はファッション業界にいましたが、元々はグラフィックやプロダクトデザインの学校を出ていました。私のフィロソフィーの一番根底にあるのは「全ての美は数式である」ということ。だから、ファッションもロジックなんです。それを理解してもらうために、ペットボトルの中身とラベルに例えて、服装の重要性を説明しています。

立石:しぎはらさんとの出会いは2014年の9月ですね。ペットボトルの例えを聞いた時、頭がツーンという感じがしました。その日の僕は、穴があったら入りたい的な服を着ていたので、即スタイリングをお願いしました。

それから僕の4年間の成長の加速、本当に半端なくて。ぜひうちの講師の人たちにも学んでほしくて、早速セミコンのコメンテーターになっていただいたり、セミナーをしていただいたりしました。しぎはらさんにスタイリングをお願いすると、一瞬で変わっていくような気がします。

しぎはら:ラベルの付いていないペットボトルでは、お茶を選べない。ラベルがついているから、商品になる。人もその人を表す服飾という視覚情報のラベルが付いた瞬間、ブランドになるんです。

立石:その話は僕の「セミナー教師の教科書」にも詳しく書かせてもらいました。初めてセミコンをご覧になった時の感想をお聞かせください。

しぎはら:3つあります。1つ目は、自分の経験や信念を人に伝えたい人たちが、こんなに大勢いらっしゃるんだということ。
2つ目は、それを応援する人たちがいることにびっくりしました。
3つめは、「共感」。人とつながる一番ベーシックな形が、ここに脈々とある。これは、やっぱり立石さんの素晴らしい功績だと私は思います。

立石:よくコミュニティという言い方がされます。いい形で皆さんが出会い、この場だけではなく、お互いが支援し合いながら成長しています。

しぎはら:うちの娘がたまたま、内閣府のシェアリングエコノミーの伝道師をやっていて、今は共感の時代だとか、つながるとか言っていますが、それって昔のお醤油の貸し借りと一緒なんですよね。海の向こうから入ってくると「シェア」とか「コミュ二ティ」という言葉になる。表現こそ外国語でも、その根底にあるのは人とつながる、お互いに思いやる、助け合う、どちらかというと日本的な感覚ですね。人種や言葉を越えた一番大事なものがここにあると感じました。

立石:そう言っていただけると嬉しいです。その後はどっぷりセミコンに関わっていただきました。今のセミコンの発展は、しぎはらさんあってのものです。それだけみんなの意識が変わりました。我々も服装に関しては、あまり目が行ってなかったので、本当にいい時に関わっていただいたと思っています。

しぎはら:私もビジネスが忙しくなってきたので、仕事関連で新しい友達ができることがほとんどなかったんです。ファッション業界内では、異端児と言われ続けてきたので。感覚的な人が多い業界内では、どちらかというとロジカルな私は、話がかみ合わないんです。ところが、今仲良くさせていただいている人達は、セミコン出身の講師の方だったり、審査員だったりします。そんなみなさんとつながれる豊かさを感じています。

セミナー講師業は、生き方や経験がそのまま経営資源に

立石:このパンフレットを読むのは、これから講師を目指している方もいらっしゃいます。しぎはらさんご自身は講師として何年目ですか?

しぎはら:セミナー講師としては出版とほぼ同時期で3年くらいです。ただし、それ以前に企業研修、販売員研修を30年以上やっています。

立石:一般の人向けに講師をしてみて、変わったこと、良かったことを教えてください。

しぎはら:やっぱり企業研修などは、どうしても目的が数字ですよね。一般の方向けのセミナーは、受けてくださる方の自己実現をお手伝いできることが最大の違いです。そして、話している時の私自身の幸福感も全然違います。

立石:それは嬉しいですね。それまでは売上げとか、会社だから問題解決とかでしたか。

しぎはら:問題解決とか、販売員のロールプレイングとか。その上のステージはさらに厳しく、役職者の研修は数字がどうしても入ってくるので、シリアスな研修になってきますよね。
それがガラッと変わって、立石さんの所でお話させていただいている時は、私の心の中でいつも温かいものを抱えた状態で話ができます。それがいちばんの喜びです。

立石:嬉しいですね。まさにやりがい、気概、ライフワークです。
講師をして3年とのことですが、今はどういうスタイルで、どういう目的で講師をされていますか?

しぎはら:講師って、こんなに楽しいということを知りました。私は専門家向けとか業界内でしか話してこなかったので、私の話を必要としている人っていないと思っていました。でも、そうではないと気が付いたんです。今は服飾戦略の講師として、講演コムのようなところから依頼が来るので、三井さん、住友さんなど大手一流企業に呼ばれて講演に行くこともあります。

他にはずっとクローズドで、女性のためのスタイリングをやっています。その方たちがものすごくブレイクされて、「しぎはら先生、起業塾やってください」と言われ、来年から女性のための起業塾をやります。タイトルは「女王様のための起業塾」。一人で起業して、出産・子育てなどいろいろなことがありながら、60歳になりました。服のブランディングとともに、働く方法をお伝えする塾を始める予定です。

立石:すばらしい。講師業は魅力的な仕事ですよね。

しぎはら:本当ですよね。女性にピッタリです。今まではファッション業界内での研修が中心でしたから、キャリアに関するスキルをお伝えしていましたが、セミナー講師業は違いますね。その人の生き方や経験がそのまんま経営資源になる。ものすごい発見でした。

立石:僕は保険業界に15年ほどいました。今思うと保険会社時代に、研修を受ける機会が多かったんです。外資系の保険会社は、研修が毎週ある。僕は外部のセミナーが好きで、いっぱい受けまくっていた。それで、自分は講師をやるタイプではないとずっと思い込んでいました。けれど、あることがきっかけで講師をやって、これが意外と上手くいった。自分では当たり前に思えていることが、講師をやると、あんなことが役立つ、というのがありますね。自分の価値が再発見できるかどうかは、アウトプットしてみないと分からない。そういう意味では、講師って誰もが一度はやってみたらいいのに、って思います。特にある程度の経験を積んでいる人は。

しぎはら:日本の教育って、なかなか自己肯定感を持てずに育ってしまうことがありますよね。ところが、セミコンって、関わる人がすべて自己肯定感を上げるシステムになっているんですよ。これにも驚きました。お互いに褒め合う、指摘し合う。そして自分がやってきたことに拍手をもらえる。こんな経験は自己啓発セミナーに一人で参加するだけではできないこと。この人数と力と応援団によって、一瞬にして、何十年も抱えてきたダメだった自分が、反転する瞬間がありますね。

立石:それは12年やって、私自身もすごく感じます。職場はどうしても利害関係が発生しますが、セミコンはみんなが平等。応援する人とサポートする人には何の利害関係もなく、投票やフィードバックもネガティブなことじゃなく、みんなその人のことを思ってやるんです。フィードバックを受けることが、すごい力になるんですよ。

しぎはら:そうですね。人生の宝ですね。
そういう意味では成長していく人たちに、いい形で関われているなと思います。ですから、セミコン関係のスタイリングをすると、皆さんすでに自己肯定感が変わった状態でいらっしゃるので、一瞬で、「あ!こんな素敵な自分」、を受け入れてくれますよ。

 

外見は言葉を持つ。
「伝えたいこと」を語る洋服を味方に

立石:セミコンの人ってスタイリングはやりやすくないですか?

しぎはら:すっごくやりやすいです!ただ残念なのは、セミコンのストーリーを先に考えて、服が最後になっちゃうこと。実は服飾戦略的に言うと、おおまかなストーリーが決まったら、スタイリングにいらっしゃったほうがいいです。どういうことかというと、学芸会の練習で桃太郎の恰好をしますよね。衣装は最後に着ます。でも、人って衣装を着ると、役になるんです。たとえば猿の服を着ると猿になれるんです。それと同じで、ある程度方向性が決まったら、衣装を決めちゃったほうが、上達が加速します。「なりきりスイッチ」が入るからです。

立石:僕も、実感しています。先に服を選んじゃいましたから。なりたい自分を探し、先に服を着る。先に着るとすごくわかりやすい。

講師の服装を、たくさん見ていらっしゃったと思いますが、改めて講師にとってなぜ服装が大事なのか?なぜ洋服にこだわらなくてはいけないのでしょうか。

しぎはら:講師は、ただの人であってはいけない。ひと目で何者であるかが伝わらなければいけないんです。ペットボトルが一目でどんなお茶なのかが分からないといけないのと同じです。ふさわしい服を着ることは、私は社会人として当然だと思っているんですね。情熱的ですと、いくら口で言っても、全身真っ黒なら、どこが情熱的なんだよと思っちゃう。人というのは視覚情報で入ってきたものと、中身を知るのとでは、先に視覚から入ってきたものが中身だと認知してしまう脳の働きがあるんです。

同時に全ての物や形は言葉を持っています。だから、言っていることと違う形や色を選んでしまうと、講師が伝えていることが半減してしまいます。

皆さん、非常に志が高く情熱を持ち、伝えているんですけど、外見は二の次になっている。外見が言葉を持っていたり、何かを伝えることに気付いていないのです。

ところが、人の外見を見て自分はジャッジします。同じように自分もジャッジされるところに気付いていない。99%の人がそうです。

立石:無意識だから?

しぎはら:満員電車で、不潔な感じの人の隣と綺麗なお姉さんの隣の2つの席が空いていたら、ゼッタイ綺麗なお姉さんの隣に無意識に座りますよね。自分はそうやっているくせに、自分の隣が空いた時に人が座るかどうかなんて考えないでしょう。

ましてや伝えたいことがある人は、きちんと外見から伝えたほうが良いですね。

 

「なりたい自分」が着る服で、未来を先取り

立石:頭で分かっていても、洋服を変えるのには勇気がいります。

しぎはら:一番邪魔をしているのが、「似合うかどうか」という悪しきジャッジ。「似合っている」というのは、見る人の主観です。それで洋服を選んでいたら、買い物で販売員が変わる度に、どれが良いのかわからなくなります。

それよりも「洋服は全て言葉を持っている」という話をしましたが、自分がなりたいイメージを言葉で先に作っておきます。たとえば「カッコよくて風格のある人」なのか「優しくて温和な人」なのか。

洋服を見ただけでも、カッコイイなとか、優しい感じだなとか、人って思うわけじゃないですか。先にそれを決めて、人が何と言おうと、自分が着たいものを着てしまうことです。

「しぎはらさん、何を着ればいいですか?」とよく聞かれますが、答えは1つです。「なりたい自分になれる服を着ればいいんです」。

立石:なりたい自分が明確なのに、逆に服が足を引っ張っちゃってるんですよね。

しぎはら:そうなんですよ。だって、なりたい自分があって、「私はこうなんです」という自分があるから、登壇するわけですよね。それなのに、なりたい自分と全然違う服を着ちゃってるのが残念ですね。なりたい自分のジャッジメントは目的が明確なのに、服に関しては、似合うかどうかというところでブレてしまうんですよ。

立石:僕もしぎはらさんにお会いするまで、全く分かっていませんでした。

しぎはら:義務教育で毎日着る洋服のことを、ちゃんと教えないから、こういうことになるんですよ。だから、服育協会を立ち上げたんです。

立石:楽しみですね。

最後に、登壇される方に、「なりたい自分にふさわしい服を選ぶ」ために、具体的にどんなことをこれから心がけたらいいかアドバイスをお願いします。

しぎはら:いきなり、なりたい自分になれる服、と言われても困ると思うので、簡単な方法を。自分が何のセミナー講師か、いろいろジャンルがあると思います。一番簡単なのは、自分が憧れの人になったつもりでしゃべることです。大事なことは、その憧れの人はどんな服を着ているか。そこに近い服を着るのが、いちばん簡単だと思います。

立石:憧れの人は、芸能人とかでもいいんですか?

しぎはら:いいですよ。みんな憧れを大体投影するんですよね。
例えば立石さんだったら、「渡辺謙みたいに」と思ったら、渡辺謙さんの服を着ればいいんですよ。もっと簡単なのは、映画やドラマの中で、その人が演じている役で着ている服を選ぶこと。役と中身は、必ずピタッと合っています。そのためにスタイリストが服を選んでいるから。自分がなりたい、役柄の人の服をそのままマネする。というのが一番の近道です。

「お姫様になりたいわ」と思う時に、ディズニーシンデレラ7人のお姫様はみんなキャラが違いますね。可愛い感じのお姫様なら白雪姫、エレガントな感じのお姫様ならシンデレラの衣装を着る。そういうふうに選べばいいですよ。

立石:色はどうやって決めたらいいですか?

しぎはら:色を見た瞬間、人間はなんらかの連想をします。色彩連想といって、例えば赤を見ると情熱、それと同じように全部の色が連想するものを持っているので、ネットで「色彩心理」と調べたい色名で検索すると、該当する言葉が出ます。穏やかで優しい人になりたければ、そういう言葉を持った色を探して、自分のイメージ色にすればいいです。

立石さんに紫を選んだのは、京都の色であり、出身校の同志社大学の色だから。紫は神に近い色で、まつりごとに使われてきました。ですから、協会の代表である立石さんは、人と人とをつなぐ存在。みんなをつなぐ神として人を司る。そういうイメージとして、紫を選びました。特に日本の紫は、世界に類を見ないほど種類があります。色味の違う紫を選んで組み合わせ、立石さんのイメージカラーとしてブランディングをしました。

立石:その話を聞かせてもらった上でコーディネートしてもらったから、紫を身にまとうと、そういう気持ちになるんですよね。色って本当に心理効果が大きい。自己確認もできる。そんなことはないですか?

しぎはら:特に立石さんの場合は、モノを扱うのではなく、目に見えない人の心と思いを扱いますよね。ですから非常に神聖なものであると思うので、神さまの色の紫がぴったりだと思います。

立石;じゃぁしぎはらさんは、ゴールドと白ですね。

しぎはら:それは何故かと言うと、私はファッションで人に光を与える人だから。光を与えるので私は常にゴールドと白です。白色は、まっさらな気持ちでお客様に接したいからです。

セミナーの時だけ黒や紺を着ます。輝かせてあげる人が、黒を着ていたらイヤじゃないですか。

立石:最後に、これから講師を目指す方にメッセージをお願いします。

しぎはら:あなたが、伝えたいと思うことを伝えるために、ファッションは本当に強力なツールであり、導いてくれる味方です。上手に使っていただきたいと思います。そのためには、自分が着たい服を着て、服の力を使って未来の自分に一足先になってしまう。人に何と言われようと、自分の人生ですから。着ちゃったもん勝ちです!

立石:本日はありがとうございました。

 

※対談は2018年12月に行なわれました。

プロフィール

しぎはら ひろ子(しぎはら・ひろこ)
ファッションプロデュサー
服飾専門家。
ファッションエデュケーション協会代表理事
文化服装学院特別講師。
日本ベストドレッサー賞選考委員。
「服は内面を磨き、自信を育て、内面は見た目 に反映されて魅力的となる」との理念を掲げ、服育の第一人者として85,000人以上にわたるアパレル、スタイリストへセミナーを主催するほか、セルフブランディングの視点から個人の服飾スタイリングも行う。
著書に『朝 5秒の鏡の魔法 その無難な服では 稼げません!』(講談社)、『何を着るかで人生は 変わる』(三笠書房)など多数。
「3年後の未来の服を一足早く着ることで理想の人生がかなう」をモットーに、300名以上の者・女性起業家を成功に導いてきた経験を元に、2019年4月には「女王の起業塾」を開講予定。
【HP】一般社団法人国際ファッションエデュケーション協会 http://aife.jp/about01/


立石 剛(たていし・つよし)
セミナーコンテストグランプリ主催者
一般社団法人日本パーソナルブランド協会 代表理事、有限会社 ブランドファクトリー 代表取締役。自分ブランド構築の専門家。
2007年より、自分ブランド構築にも役立つという理由から、セミナー講師指導に尽力している。セミナー講師の甲子園「セミナーコンテスト」を主催し、すでに1000名以上の講師が誕生。著書に『[決定版]セミナー講師の教科書』、『セミナー講師の伝える技術』技術(ともに、かんき出版刊)などがある。